1996年 | 短刀 | 銘 | 昭次作 平成八年二月吉日 |
刃長 27.4cm 反り なし |
形状 | 平造り、庵棟。 |
地鉄 (じがね) | 小板目肌、地沸つく。 |
焼刃 (やきば) | 小沸出来の互の目乱れ。 |
帽子 (ぼうし) | 小丸。 |
中心 (なかご) | 棟小肉、鑢目筋違、先刃上がり栗尻、孔一。 |
この短刀は前掲と全く同じ年紀を切るが、製作法が異なり、従って作風もご覧の通りである。 前者が銑を吹き、これを反射炉式精錬によって鋼とする、いわゆる間接製鋼であるのに対して、これは小型タタラで鉧(けら)すなわち鋼を得る直接製鋼を採っている。
得られた鉧の炭素量がいかほどで、冴える鉄になるかどうかなどは、火花を見ただけで経験と勘から判断できる。 自家製鉄で求めるのは、鉄質が敏感でありながら、できるだけ低炭素にという矛盾した要素である。
あとの鍛錬は、折り返し回数が問題ではなく、スラグを抜くことに主眼が置かれる。
本作は、地鉄に自然な動きがあり、地刃に沸がよくつき、高低のある焼刃も冴えている。
天田昭次 作品集より