作品 3

1973年 直刀 昭和癸丑年仲秋 天田昭次作
以伊勢神宮御神宝余鉄 為大越氏重代
刃長 63.6cm 反り なし
形状 切刃造り、丸棟、かます切先。
地鉄 (じがね) 小板目肌よく詰み、地沸つき、地景入る。
焼刃 (やきば) 小沸出来の直刃、匂口締まり、足入り、刃中しきりに葉入り、砂流しかかる。
帽子 (ぼうし) 直に焼き詰めとなる。
中心 (なかご) 棟角、鑢目勝手下がり、先栗尻、孔一。

直刀は、鎬造りで反りを持つ日本刀完成以前の形態である。
同趣のものは、古墳から副葬品として発掘されるほか、正倉院などにわずかに伝世品が存在する。
伊勢神宮の式年遷宮に際して新調される御神宝太刀も、古式に則った直刀である。
厳格な規格を遵守すべき御神宝の製作は、なかなかに難しい。
歪みや、研磨によってしばしば生じがちな刃方への反りも、あらかじめ考慮しておかなくてはならない。
前回の昭和二十八年の遷宮の折、作者は兄弟子の宮入昭平(のち行平)刀匠の助手として奉仕している。
まだ制度として作刀が再開される気配はないが、宮入氏は来るべき日のために、心血を注いで本格的鍛錬に当たったという。
当時、天田さんは三ヶ月余り、長野県の宮入工房に逗留し、主に下鍛えの作業を手伝った。
その体験は、再開後の作刀にも、本刀にも十分生きている。

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