1974年 | 太刀 | 銘 | 越後国北蒲原郡月岡住人天田昭次作之 第五十五代横綱北の湖生誕ヲ記念シ此太刀贈ル 昭和甲寅七月廿四日 福原清一郎 高橋良禎 |
刃長 72.4cm 反り 1.9cm |
形状 | 鎬造り、庵棟、中切先。 |
地鉄 (じがね) | 小板目肌よく詰む。 |
焼刃 (やきば) | 匂出来の丁子乱れ、小沸つき、刃中足、葉よく入る。 |
帽子 (ぼうし) | 乱れ込み、先尖りごころに返る。 |
中心 (なかご) | 棟小肉、鑢目筋違、先浅い栗尻、孔一。 |
横綱北の湖関(現・日本相撲協会理事長)の現役時代、上俵入りに登場した太刀である。
二人の後援者から一年前の関脇当時、横綱になったら贈ろうと、製作が依頼された。
初場所で初優勝し、大関に昇進したところで仕事を急ぎ、夏場所十三勝で横綱昇進を確実にしたころ、タイミング良く完成したという。
この太刀は製作上、二つの意欲的な試みがなされている。
一つは、低温による直接製鋼であり、もう一つは丁子乱れである。
低温製錬こそ古刀再現の突破口とする見解は今も一部に根強いが、実はスラグが多く、地鉄が濁りやすい。
丁子は最も技巧的な焼刃で、焼刃土や焼き入れの諸条件が調和しないと、破綻を来しやすい。
のちに多くの刀鍛冶が試み、愛刀家に称揚される丁子を、天田さんはこの一、二年前からひそかに研究していた。
この作風を展覧会に無鑑査出品するのは、昭利六十二年のことである。
本作には当初からの太刀拵(たちごしらえ)が添えられている。
天田昭次 作品集より