1977年 | 太刀 | 銘 | 為中田敏之氏 天田昭次作之 昭和丁巳五拾二年正月吉日 |
刃長 72.2cm 反り 2.1cm |
形状 | 鎬造り、庵棟、中切先詰まり猪首風となる。 |
地鉄 (じがね) | 板目肌やや肌立ち、流れごころとなり、地沸つき、地景よく入る。 |
焼刃 (やきば) | 匂がちの直刃に小足よく入る。 |
帽子 (ぼうし) | 直に小丸、先尖りごころとなる。 |
彫刻 | 表裏に棒樋を掻きながす。 |
中心 (なかご) | 棟小肉、鑢目筋違、先栗尻、孔一。 |
最初の正宗賞受賞作である。
地鉄が凛として美しく、これに直刃を力強く焼く技術は尋常でない。
焼き出しはわずかに狭く、次第に勢いを増しながら立ち上がり、物打ちから帽子にかけて絶頂を迎える。
殊に帽子は、表裏とも完壁である。
直刃は当初から得意な作域であるが、この作の土置きにはじっくり取り組み、妥協をしなかったという。
素材は、出雲の真砂を低温で製錬した。
得られた鋼はスラグを多く噛み込んでいて、合有炭素量も低い。
丹念にスラグを抜き、浸炭させなくてはならない。その困難な作業もやり遂げた。
二十年ほど以前から取り組んできた自家製鉄に確信を持つとともに、日本刀作家としての評価を一気に高めた一刀である。
天田昭次 作品集より