1993年 | 脇指 | 銘 | 豊月山昭次 平成五年仲春日 |
刃長 37.8cm 反り 0.3cm |
形状 | 平造り、庵棟。 |
地鉄 (じがね) | 板目肌やや肌立ち、地沸つき、地景よく入る。 |
焼刃 (やきば) | 丁子乱れ、小沸よくつき、足長く入り、刃中金筋、細かい砂流しかかる。 |
帽子 (ぼうし) | 乱れ込み、先小丸尖りごころに、やや長く返る。 |
中心 (なかご) | 棟小肉、鑢目筋違、先刃上がり栗尻、孔一。 |
備前伝の平造り脇指である。
一部に逆がかった丁子を交え、刃縁はフックラとして柔らかい。
地には暗帯を挟んで、棟寄りにヴェールのような変化が見られる。
これが強調されると、映りである。 古作のように明瞭な映りを表現する技術は、現代刀の備前伝にとって今、最大の課題となっている。
地鉄は、銑を反射炉式精錬にかけて鋼としたものである。
折り返し鍛錬をして打ち延ばしているにもかかわらず、柾目はほとんど留立たない。
不思議である。 しかも、この鋼は焼刃のいかんを問わない。
地沸がついて、地景も現れる。感度が優れていることを示している。
「豊月山」は鍛錬所の名称である。
天田昭次 作品集より